印刷博物館
印刷文化論の勉強として、飯田橋にある印刷博物館に行ってきました。
凸版印刷株式会社が2000年に100周年記念事業の一環で設立したそうです。
学生証持っていくのを忘れてしまったため入場料は300円でしたが、学割だと200円で入れます。 時期によるのかはわかりませんが、人は少なかったので一つ一つ時間をかけて見ることができました。
今は企画展示がないので、大きく分けるとプロローグ展示ゾーンと総合展示ゾーン、印刷工房があります。 一部を除き、写真撮影はできません。
プロローグ展示ゾーン
ここでは印刷の始まりから近代の印刷まで、主にレプリカが展示されています。特に説明がないので、パンフレットを見ながら進まないと何かわからないものが多くありました。
その中で気になったものとして、「ハンムラビ法典」や「ロゼッタストーン」といった石に文字が刻まれたもの、印刷文化論の教科書にも登場したグーテンベルクによる「四十二行聖書」とその想定活字組版、福沢諭吉の「学問のすゝめ」や葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」といった作品、そのほかにレミントン社製タイプライター、フェナキストスコープ、パラパラ漫画器、マッキントッシュPlusなど、ジャンルを問わず様々なものがありました。
いままで見たことがなかった作品で、ジュール・シェレの「エド・サゴ・ブックショップ」の大きなポスターや、北野恒富がミュシャに影響を受けたというポスター「貿易生産品共進会」は自分の好きな感じでした。
特にどこにも説明がなかったのですが、この展示の反対側にはすりガラスに有名な作品などが印刷されています。 簡単にしか見ていないのですが、ミュシャの「La Tosca」と「Lorenzaccio」がありました。
そのほかに中を除くと音と映像が流れる不思議な井戸があります。
総合展示ゾーン
一番広い展示エリアで、大きく5つのブロックに分かれています。
印刷との出会い
印刷と宗教についての解説や、版画についての説明がありました。
版の種類(凸版、凹版、平版、孔版)とそれぞれの特徴を知ることができます。
文字を活かす
活版印刷術の仕組みやタイポグラフィについて解説されています。 グーテンベルクの四十二行聖書や、ダーウィンの種の起源など展示されていました。
色とかたちを写す
図版の仕組みやレイアウトについて説明があります。 そのほかに濃淡の表現としてグラデーションの技法も実物と動画で解説されていたり、製本の種類の解説がありました。
より速く、より広く
大型の機械印刷機の説明や、版の種類、鋳植機、写真植字機など実物の展示されています。「大型懸垂式製版カメラC-56-Iセネター」という機械は人よりも大きく、巨大なカメラのようなものが中にぶら下がっています。 写真製版の作成の流れも学ぶことができます。
印刷の遺伝子
箔押しやUV印刷などの特殊印刷、ガラスチャートや半導体などの印刷技術の応用、マイクロブックなどが展示されています。
この他にも、様々な版画技法によって描かれた作品が展示されていて、その制作の様子や説明などが動画で見ることができます。
印刷の家
ここでは先着で活版印刷が体験できるイベントがあります。 行った日は人が少なかったので体験することができました。 イベント参加時以外は入ることができないようです。
木曜日から日曜日に開催されているイベントがつくるコースで、季節によって内容が異なり、今の時期は一筆箋に文字を印刷する体験でした。
はじめに活字印刷について10分ほど説明があり、その後実際に活字を拾って印刷します。
印刷する機械と、組版はあらかじめ準備されています。
まず印刷する文字を決め(7文字まで)、その活字を拾います。
次に拾った活字を組版に組みます。
- 印刷機に組版と紙をセットし、印刷します。
実際にはもっと細かい部分もありますが、難しいところは手伝ってもらうので、簡単に活版印刷をすることができます。
活字は80%が鉛で残りの20パーセントが錫とアンチモンということです。鉛が使われている理由は、金属の中でも融点が低く加工がしやすいことと、安価であることがあげられるそうです。 Wikipediaによると鉛80%、アンチモン17%、錫3%で融点は240℃ということです。
この印刷の家の中のみ写真撮影が可能ということで、体験後に少し撮影させていただきました。
まず、大きな印刷機がたくさん並んでいます。 外側に名前が書いてあるようですが、控えるのを忘れてしまいました…
部屋の奥には大量の活字が置かれています。
ここではもっと本格的なワークショップが定期的に開催されているようです。
その他
VRシアターでは「ウスペンスキー大聖堂」が上映されていて、解説とともに大聖堂の中の装飾を見ることができました。
P&Pギャラリーという場所で「進化するデジタル印刷」が開催されていました。こちらはチケットがなくても入れます。
印刷の家の手前でカレンダーのスタンプが押せます。4つのスタンプを重ねると完成するのですが、失敗して少しずれてしまいました。
そのほかに、印刷博物館発行のPrinting Museum News という無料の季刊誌が発行されていて、勉強の参考になりそうです。
さっと見て回る程度でしたら1時間~2時間程度で回れる広さですが、映像としてみるものがかなり多く、今回は11時半ごろから17時半ごろまで6時間ほど見学していましたが、まだ見るところはたくさん残っています。
メモをしながら進んでいったのも時間がかかった原因ですが、すべてしっかり見終わるには同じペースで2日間か3日間必要ではないでしょうか。
比較的行きやすい場所にありますし、入場料は安いのに内容はしっかりしているので、勉強ではなくてもおすすめです。